話を聞いた人:株式会社フルーツファームいとう園 社長 伊藤隆徳さん
「果樹農業に従事し、55年が過ぎた」。今回話をしてくれたのは、社長の伊藤隆徳さん。桃やぶどう、りんごを栽培し、主に贈答用として販売。味にバラつきがなく一定のおいしさを保っているのが一番の自慢で、顧客の中には30年以上買い続けてくれる方もいらっしゃるそう。果物はもちろん、ドライフルーツなどの加工品にも力を入れており、数年前には人気タレント「マツコ・デラックス」の番組で枝付き干しブドが紹介されたことで知名度が全国に広がりました。
果物の甘味をギュッと閉じ込めたドライフルーツ
東日本大震災後に株式会社として仕切り直し、果樹の6次化をスタートした伊藤さん。新しいことを始めるきっかけとなったのは、ある来訪者の言葉でした。
「中小企業団体中央会の職員さんが震災後に困ったことはないですかと訪ねて来てね。“ぶどうが安くて困っている”と話しをしました。すると“じゃあ、干しブドウにして売ってみたらどうか”と提案されたんですよ」と当時を振り返ってくれました。
確かに干しブドウにすれば、収穫期以外の月にも収入が見込める。それは良さそうだと、実践することを決めたそう。
「最初はわからないことだらけで、試行錯誤しました。ただ、自分の作った果物の味には自信があるからね。東京の商談会に何度も足を運んでは、バイヤーと話しをしました。取引が決まると、おいしさを認めてもらえたんだと嬉しくなるんだよな」
その後、要望を受けてフルーツビネガーやジュースなども展開。
これらの商品はフレッシュな桃と共に、今回の軽トラ市にも登場する予定です。もちろん、同園のHP(株式会社フルーツのいとう園)からも購入することが可能(一部、完売商品あり)。
「国産大粒高級枝付き干しブドウ」シャインマスカット(写真左)と巨峰(写真右)。着色料・保存料は使っていない100%無添加品!残念ながら現在は完売中!
一つひとつ丁寧に作業する様子。すべて手作りのため、数に限りがある。
「私が継ぐ!」教員を辞めて農業の道を歩み始めたミスピーチ
孫の愛理さんは、数か月前まで教員だったそう。
「子どもの頃からじいちゃんの果樹園が好きでした。農業に興味はあったのですが、父は三男だし、私は女だし。関われない道だと思って、教員になりました。でも、誰も継がないと知って、立候補!(笑) 1年間のお試し期間を設け、平日は仙台で教員の仕事、週末は農業をしました。最初は反対していた母も、今は認めてくれています」と嬉しそうに語ってくれました。
実は彼女、今年度のミスピーチでもあり、福島の果物をPRする役割も担っています。
「今はとにかくやりたかった農業ができて、毎日楽しくて。年に数回、JRの駅で直接販売することもあるのですが、中学生の男の子がおこずかいを持って買いに来てくれたり、お客様がおいしいって言って笑顔になる姿を直接見ることができたりして、本当にうれしいです」
起こるかわからない自然災害より、目の前の果物に集中
農業をやっている限り、自然災害のリスクは付きものと考える伊藤さん。霜やひょうによる被害、日照不足、風による落下など、毎年多かれ少なかれ被害はあるものだそう。同園では複数の果物を育てることでリスクヘッジしています。「3種類の果物を育てているとね、どれか1つがダメでも他の2つが大丈夫なら食べていける。だからうちは、自然に任せていますよ」とおおらかに笑う伊藤さん。
見えない脅威に抗うのではなく、今目の前にあることに集中することで、いつも一定の品質を保つ。「何十年に一度の大被害よりもそっちの方が大事かな」
株式会社フルーツのいとう園
住所:福島県福島市飯坂町東湯野字上岡14番地
電話:024-557-9690
メイン商品:桃、フルーツビネガー(275ml)ぶどう、りんご、もも/各1,296円