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将来の福島を見据えて、親子で育てるフィンガーライム

PIENI FARM(ピエニファーム)

福島市瀬上町にある「PIENI FARM(ピエニファーム)」は、小野明善さん、洋平さん親子で果樹栽培に取り組む農園。“PIENI”はフィンランド語で「小さな」の意味で、高齢化や気候変動など、農業を取り巻く環境が変化するなかで、「小さくても強い、持続可能な農業を」という思いが込められています。

INTERVIEW

話を聞いた人:小野洋平さん(左)、代表の小野明善さん(右)

福島では珍しいフィンガーライムの栽培に挑戦

色とりどりのフィンガーライム

PIENI FARMが育てているのは、オーストラリア原産の香酸柑橘(こうさんかんきつ)「フィンガーライム」。 細長い果実の中にプチプチとした粒状の果肉がぎっしり詰まっており、カットすると黄色やピンク、赤など色とりどりの粒があふれ出します。その独特の見た目と食感から「森のキャビア」とも呼ばれ、国内では希少な高級果実です。

カットした断面からこぼれる果肉。料理やデザートに添えると彩りと香りが広がる

「気候変動や異常気象を受けて、これからの時代に強い作物を育てようと思いました。みかんの生育には、年間の平均気温は17℃程度が適しているといわれていますが、福島市の現在の平均気温は15.5℃程度。地球温暖化の影響で、2050年には東北でも柑橘が育つ気候になるかもしれません。木になる作物は時間がかかるので、今から準備しておけば時代が追いついてくるはずです」と洋平さんは未来を見据えます。

家庭菜園から始まった親子の歩み

農園発足のきっかけとなったのは、洋平さんが趣味で始めた家庭菜園でした。
「小さい頃から作物を育てるのも食べるのも好きで、YouTubeを見ながら野菜や果物を独学で育てていたんです。その中でフィンガーライムを知って、『福島では誰もやっていないから面白そうだな』と思いました」。

まもなく収穫を迎えるフィンガーライム

洋平さんは、2022年の冬に、国内におけるフィンガーライム栽培の第一人者である長野県の生産農家「Finger Lime Japan」より品種確定苗10本を購入し、家庭菜園用の自作ビニールハウスで栽培をスタート。フィンガーライムの苗木には、病害や寒さに強いカラタチ(※1)が台木(※2)として使われており、ハウスでの鉢栽培であれば、冬越しが可能だと考えていました。
その後、退職を機に明善さんが代表として、PIENI FARMを立ち上げ。現在は果樹生産用のビニールハウスにて、フィンガーライムやレモンなどの柑橘類を育てています。 将来的な生産者の拡大も見据え、台木となるカラタチを栽培し、自前での接木苗も生産しています。

※1 カラタチ:ミカン科の落葉低木で、耐寒性が高く、柑橘類の台木としてよく使われます。

※2 台木(だいぎ):接ぎ木をするときに、根や幹の部分となる植物のこと。耐寒性や耐病性を高めるために利用されます。

正解のない農業を親子で模索中

苗木の様子を見る洋平さん

PIENI FARMでは現在14品種のフィンガーライムを栽培しています。四季咲きで長い期間収穫できるもの、一期咲きで隔年結果(※3)しやすいもの、粒状の果肉ができるまで時間がかかるものなど、特性はさまざまです。
「福島には桃やりんごのように先人がいないので、すべてが手探り。試行錯誤の毎日です」と明善さん。
夏にはハウス内の温度が50℃近くに達することもあり、温度と湿度の管理も欠かせません。
昨年はハウス内にアゲハ蝶が侵入し、卵から大量の幼虫が発生。その経験を生かし、今年は自作のカーテンでハウスの隙間をふさぎ、害虫の侵入を徹底的に防いでいるそうです。苗木の様子をよく観察し、適切なタイミングでの防除や施肥を行い、減農薬に努めています。

※3 隔年結果(かくねんけっか):果樹が「1年はよく実り、翌年は実りが少ない」といった具合に、年ごとに収穫量が変わる性質のこと。

とげ対策に革製の手袋をして手入れを行っている

「私は毎日の農作業を、息子は情報発信や栽培データの管理を担当。自然と役割が分かれています。話さなくても通じる部分があるのは、親子ならではですね」と明善さん。「フィンガーライムは、少し目を離しただけで調子を崩してしまうので、子育てよりも気が抜けないかもしれません」と笑います。

食べた人の驚きがやりがい

フィンガーライムを初めて食べた人の多くが、その食感に驚くそうです。
爽やかな酸味と香り、プチプチとした食感が特徴で、ほかの食材と混ざり合わずにアクセントを添えられるのがフィンガーライムの魅力。和食・洋食を問わず、さまざまな料理やドリンク・デザートなどにもよく合います。

明善さんが「ぜひ試してほしい」と話すのが、市販のアイスクリームにトッピングする食べ方。「200円のアイスが、レストランのデザートみたいになりますよ」と目を細めます。

福島市のイタリアン「オステリア デッレ ジョイエ」や、郡山市のフレンチ「なか田」など、県内の名店でもPIENI FARMのフィンガーライムが使われています。
「レストランで料理に使ってもらえたり、初めての方に喜んでもらえると作り甲斐がありますね」と明善さんは話します。

市販のアイスクリームに添えると爽やかな香りや食感が加わり、見た目も華やかに

未来の福島を見据えた持続可能な農業へ

3年ほど前からナッツの栽培も本格的にスタートしている

PIENI FARMでは、柑橘類だけでなく季節ごとの収穫バランスを考え、ナッツ類の栽培もスタート。ヨーロッパやアメリカ原産の品種のヘーゼルナッツやアーモンド、ピーカンナッツなどの木を育てています。収量が安定するまでには時間がかかりますが、来年の販売を目標に、日々の管理を重ねています。

気候の変化を見据え、柔軟な発想で新たな果樹づくりに取り組むPIENI FARM。その一歩一歩が、これからの福島の農業を支える力になっていきそうです。

PIENI FARM(ピエニファーム)

住所:福島市瀬上町字向瀬上9
栽培作物:フィンガーライム(14品種)、レモン、ナッツ(ヘーゼルナッツ・ピーカンナッツ・アーモンド)

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